魚は臭い?

魚は臭いのか?

料理番組やら、レシピと言われる本やサイトなどにはよく”魚の臭み”なるセリフが良く登場する。

魚の臭みだ?

なんだ?それ?

「どんな臭い魚を使ってるんだ?」「どんな鮮度の低い魚を使っているんだ?」

と、いつも思う。

何のニオイを臭いと言っているのだろう?

鮮度が十分な状態を前提として・・・

その魚の特徴を示す体表にあるヌメリを中心としたニオイの事を言っているのだろうか?

ボラなんかは特徴的なニオイだよね。

しかし、ボラと言えどもキッチリとヌメリを落とせばボラ臭?は大幅に軽減する。

もし、この魚の種類的な体表のニオイを臭みとのたまうなら、そして下処理後もそれを臭みとのたまうなら、それは処理が不十分だからだろう?

他に何がある?

根本的に、魚それぞれにその特徴を示すニオイはある。

生き物なんだから当たり前さ。

数日風呂に入っていない人間の方がよほど臭いわ。

もしかして処理後の魚の身肉を臭いと言っているのだろうか?

確かに処理中には内臓とかニオイのある魚もいるね。

鮮度が低いとその内臓のニオイが身に移っている場合もある。

また、内臓に特徴的なニオイを持つ魚であるにも関わらす、血抜きをせずかつ鮮度落ちした魚は全身にその特徴的なニオイが回っている場合もある。

しかし、一般的にスーパー等に並ぶ魚はそこまで特徴的な魚は並ばない。

では、一般的な魚の臭みって何なんだ?

簡単に言えば、鮮度落ちした魚のニオイさ。

要するに、料理番組やレシピ本等の内容は鮮度落ちした魚のニオイをいかにごまかすか?が描かれていると思われる。

ショウガがどうの言っているが、おいらはごまかす為にショウガは使わない。

ショウガ臭くて魚の風味が殺される。

より風味よく仕上がるならば使う。

魚の鮮度

まずは、魚の鮮度の変化について知る必要がある。

魚の鮮度の維持

魚は畜肉と異なり鮮度が重視される。

それは畜肉と比べ変化が急激に進行するからである。

魚の鮮度の変化を簡単に表現すると、

死亡→死後硬直開始→完全硬直→解硬→腐敗

と、なる。

魚の鮮度維持は漁獲/釣獲後の扱いによって変わってくる。

温度管理も重要な要素、しかし商業的に行われる漁業ではその魚価と手間から全ての魚を1尾づつ手間をかける訳にもいかない。

多獲性浮魚等は漁獲した魚を船内で氷を入れた海水で低温で即殺?する〆方が行われる。

その水量と魚の量のバランスによっては、底の方の魚はその重量によって鮮魚の形を維持できない。

そんな魚は養殖魚の飼料とする感じ?

しかし、水量を多くすれば浮力が発生し運搬効率は下がる。

魚価は勿論、鮮魚の方が高い。

一番稼げるボーダーラインはどこか?

そこが漁業者の腕の見せ所か?

活け〆や神経抜きは、死後硬直開始までを遅らせる効果があるとされる。

結果として、鮮度がより長く維持できる。

だが、こういった手間が掛けれらるのは高級魚に偏っているように思う。

そういった事からすれば、一般の釣り人が一番鮮度維持に有利な気がする・・・・・

が、次々に釣れる状況の場合は結局魚を釣る方が優先となってしまうんだな。

2人で釣りに行って、一人は魚の処理専門って体制で臨めば最強!

 

魚の保存温度

魚の保存は低温に限るっ!

と思っている人は多い。

漁師でもそうだ。

何でもカンでも潮氷って氷を放り込んだ海水に魚を突っ込む。

だが、彼らは昔からそれが最強だと思い込んでいるに過ぎない。

ひたすら低温なのが本当に正しいのだろうか?

細菌の繁殖を控える観点からすればそれが正しい。

が、魚の鮮度は単に細菌の繁殖の問題だけではない。

魚の鮮度維持は、死後硬直までの時間をいかに遅らせるかに尽きる。

おいらの愛読書の”さしみの科学”によると、ヒラメの0℃、5℃、10℃、15℃、20℃の温度での輸送実験結果が記されていた。

0℃と20℃が比較的早く死後硬直が起こっていたとある。

結論として5℃~10℃が最も良い結果となった。

潮氷は0℃を下回る温度だろうから、この実験の範囲外の温度だが想像するにやはり5℃~10℃が最も良いと思われる。

ちなみに、マダイ、ハマチ、マゴチ、イシダイで0℃と10℃での貯蔵実験を行った結果は、10℃での貯蔵の方が硬直到達時間は遅かったそうである。

この事から少なくとも、死後硬直前の上記魚種を氷を放り込んだ海水に突っ込む行為は逆効果なのである。

 

魚の変化

魚に限らず、筋肉中にはアデノシン三リン酸(ATP)という高エネルギー化合物が存在する。

このATPが、細胞の生命活動の為のエルギー源になっている。

ATPが加水分解されるとエネルギーが放出されアデノシン二リン酸(ADP)になる。

生きている内はATPに戻る反応が働く。

しかし、死んでしまうと再生反応は起こらなくなり分解の反応が一方的に進行する。

その分解の流れは下記の通り。

アデノシン三リン酸(ATP)→アデノシン二リン酸(ADP)→アデノシン一リン酸、アデニル酸(AMP)→イノシン一リン酸、イノシン酸(IMP)→イノシン(HxR)→ヒポキサンチン(Hx)

イノシン酸は旨み成分として知られてますね?

コンブの旨みはグルタミン酸、かつおぶしの旨みはイノシン酸。

このイノシン酸が増えると味が良くなってくるという理屈。

そのピークは死後数時間から十数時間後となる。

当たり前だが、ピークを迎えた後は減少に転じる訳である。

魚種にもよるだろうし、保存温度やそれ以外の保存状態によっても変化するだろう。

活け〆したとかしなかったとかの影響もあろう。

一概に言えないのは分かるが、魚を数日間寝かせた方が旨いという話は個人的に理解不能である。

理解できるとすれば、好みの問題”でしょうか?

あと、気分の問題?

数日経過した魚を”熟成”などの表現され、鮮度とかあまり気にした事の無い人がそれをプラスに理解し、特別なモノと脳にインプットされたら心理的に美味しく感じる事もあるかも知れない。

おいら的には、単なる鮮度落ちした魚としか思えないけどね。